「外国籍の方を雇用したいが、どのビザが適しているのか分からない…」
「技術・人文知識・国際業務という名前は聞いたことがあるけれど、何ができて何ができないの?」
そんな疑問を抱える企業担当者や、就職・転職を目指す外国籍の方に向けて、本記事では「技術・人文知識・国際業務」ビザについて、分かりやすく、実務に役立つ視点で行政書士が解説します。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは?
「技術・人文知識・国際業務」は、外国人が日本で専門的な知識やスキルを活かして働くための在留資格です。
正式には1つの資格ですが、実務上は以下の3つに分類されます。
分類 | 主な職種例 | 必要な知識・背景 |
---|---|---|
技術 | エンジニア、技術開発者、機械設計など | 理系の専門知識(工学・情報学など) |
人文知識 | 経理、企画、マーケティング、コンサルなど | 文系の専門知識(経済・法学など) |
国際業務 | 翻訳、通訳、語学講師、海外取引、デザインなど | 外国文化に基づく感性や言語能力 |
各分類の取得要件は?
「技術」の分野で在留資格を取得するには、単なる学歴や職歴だけではなく、申請者が行う業務との関連性や雇用先の信頼性も総合的に審査されます。以下は、主な要件です。
技術分野の要件
- 1.専門的な学歴の証明または実務経験の証明
-
例えば、エンジニアとして働く場合、機械工学や情報工学などの理系分野を大学で学んでいる必要があります。海外の大学卒業でも申請可能ですが、「申請する業務との関連性」が重要なポイントです。
-
学歴による申請が難しい場合、実務経験が強みになります。例えば、技術開発の分野で長年働いてきた経験や、工学の知識を現場で活かしてきたことが証明できれば、申請の可能性が開けます。
- 2.報酬の妥当性
-
日本人が働く場合に受ける報酬と、同等以上であることが要件の1つです。在留資格が「技能実習」とは異なり、労働条件の不均衡がないよう報酬面も厳しく審査されます。雇用契約書や給与明細などの書類が求められる場合もあります。
- 3.雇用先の信頼性と持続性
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雇用先企業に安定性・継続性があることも重要なポイントです。企業の経営状態や将来的な雇用継続の見通しが、申請者の日本での活動安定性として評価されます。赤字続きの会社や設立間もない企業は、申請が不利になることもあります。
人文知識分野の要件
人文知識」分野は、経済・法務・社会学などの文系知識を活かした業務に従事する外国人向けの在留資格です。具体的には、通訳、マーケティング、企画、経理、法務などが該当します。以下は主な要件です。
- 1.専門的な学歴の証明または実務経験の証明
-
経済学、経営学、社会学、心理学、言語学などの文系分野を専攻し、大学で修了していることが求められます。海外大学卒業も認められますが、業務との関連性が審査されます。
学歴による要件を満たしていない場合、長期間の実務経験を通じて知識や能力を習得していることを証明することで申請可能です。過去の職務内容が具体的に評価されます。
- 2.報酬の妥当性
-
日本人が働く場合に受ける報酬と、同等以上であることが要件の1つです。不当な労働条件で雇用されていないことが重要です。報酬の妥当性は、雇用契約書や給与明細、業界平均などをもとに審査されます。
- 3.雇用先の信頼性と持続性
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外国人が安定して日本で働き続けるためには、雇用先が健全な事業運営を行っていることが求められます。会社の財務状況や今後の雇用継続の見込みなどが確認されます。
国際業務分野の要件
「国際業務」は、外国人の語学力や国際感覚を活かして、日本企業で広報・海外取引・通訳などの業務に従事するケースに適用される在留資格です。以下は主な要件です。
- 1.専門的な学歴の証明または実務経験の証明
-
大学卒業者は実務経験要件が免除され、関連業務で3年以上の実務経験があることが重要です。
学歴ではなく職務経験で申請する場合、職務内容が「国際業務」に明確に該当している必要があります。過去の雇用証明書や職務内容説明書などが重要な資料となります。
- 2.報酬の妥当性
-
前述と同様に日本人が働く場合に受ける報酬と、同等以上であることが要件の1つです。
- 3.雇用先の信頼性と持続性
-
こちらも前述と同様に、外国人が安定して日本で働き続けるためには、雇用先が健全な事業運営を行っていることが求められます。
就労制限と注意点
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、専門的な知識や技能を活かす業務に限って就労が認められる資格です。
つまり、単純労働や汎用的な作業には従事できません。
認められない業務の例
以下のような業務は、原則としてこの在留資格「技術・人文知識・国際業務」では認められません。
業務内容 | 理由 |
---|---|
飲食店での接客・配膳 | 専門知識を要しない単純労働と判断される |
工場でのライン作業 | 技術や知識の活用がないため不適合 |
建設現場での作業員 | 肉体労働であり、学歴・職歴との関連性が乏しい |
清掃・荷物運搬 | 専門性が認められない |
認められる業務の条件
- 大学や専修学校で学んだ分野と関連性があること
- 専門的な知識・技能を活かす業務であること
- 日本人が同様の業務に従事する場合と同等以上の報酬があること
- 業務内容が継続的かつ安定していること
例えば、工学を専攻した外国人が、CAD設計業務に従事する、経済学を専攻した外国人が海外取引のマーケティング業務に従事する、日本語学を専攻した外国人が、外国人向けの通訳・翻訳業務に従事する、といったような場合が認められます。
転職・派遣・副業の注意点
転職時のポイントについて
転職は可能ですが、在留資格の活動内容と一致しているかどうかが重要です。
新しい勤務先の業務が「技術・人文知識・国際業務」の範囲内であれば在留資格の変更は不要ですが、「就労資格証明書」を取得して、転職後も資格に合致していることを証明できるようにしましょう。
また、無職期間が長いと在留資格取消のリスクがあるため、速やかに転職先を決めるようにしましょう。
派遣社員としての取得について
「技術・人文知識・国際業務」ビザは、派遣社員としても取得可能です。
ただし、以下の条件を満たす必要があります。
条件 | 説明 |
---|---|
派遣元と雇用契約があること | 派遣会社が雇用主である必要があり |
派遣先の業務が資格に合致していること | 専門性があり、学歴・職歴と関連している業務 |
派遣契約が継続的であること | 単発・短期ではなく、安定した契約が望ましい |
派遣先の業務内容が明確であること | 業務内容説明書や契約書で裏付けが必要 |
副業・アルバイトについて
「技術・人文知識・国際業務」ビザ保持者でも、副業・アルバイトは可能ですが、条件があります。
認められる場合の例として、以下のようなケースがあります。
- 本業と同じ分野の副業(例:ITエンジニアが副業でもプログラミング)
- 専門性がある業務で、在留資格の活動範囲内
- 本業に支障がない範囲での活動
副業を始める前に、業務内容と活動時間を整理し、必要に応じて入管や専門家に相談することをお勧めします。本業の会社から副業許可を得ることも重要です。
まとめ
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、外国人が日本で専門的な知識やスキルを活かして働くための重要な就労ビザです。取得には学歴・職歴・業務内容の関連性や報酬の妥当性など、複数の要件を満たす必要があり、単純労働は認められません。また、転職・派遣・副業に関しても細かなルールが存在し、誤った対応は不許可や資格取消のリスクにつながります。
「このケースはどう判断されるのか?」「申請書類はこれで十分か?」と不安を感じたら、ぜひ当事務所へご相談ください。
一人ひとりの状況に合わせた丁寧なサポートを行っています。外国人雇用を検討する企業担当者の方も、就職・転職を目指す外国籍の方も、お気軽にご相談ください。